Hitz技報第77巻第1号

当社ではごみ焼却発電施設用排熱回収ボイラのダスト除去装置として、ショック・パルス・スートブロワの実機実証運転を実施した。本装置はメタンと酸素の混合気体を急速燃焼させることにより衝撃波を発生させ、ボイラ内部の排ガスに伝播させてボイラ伝熱面に付着したダストを除去する装置である。本機1基で従来型の蒸気式スートブロワ6~10台分を代替し、充分なダスト除去効果が得られている。ボイラ構造部への衝撃波による影響はひずみゲージによる調査の結果、非常に小さいことを確認した。また、ダスト除去に蒸気を使用しないため、発電電力が向上することに加え、動作時にタービンへの蒸気量が変動せず、発電および送電の安定性が大きく向上する。

文責者
永森 稔朗
共同執筆者
南 一彦、岡田 潤、森田 寛之

当社ではパイプ肉盛溶接中にTIGトーチによる同時裏面加熱を行い、変形を大幅に減少させる溶接装置の開発を行った。本手法では、パイプの軸方向に沿って肉盛溶接を行う場合に、裏面から同時に加熱を行い、裏面側でも加熱による収縮力を生じさせることにより、表面側の肉盛溶接による収縮力とバランスさせることで変形を低減させる。肉盛用MIGトーチ、裏面加熱用タンデムTIGトーチ、TIG用円弧振りウィーバー、倣い治具等を装置に備えている。本装置を用いて、良好な肉盛溶接を行うためのMIG溶接条件および、変形を低減するTIG加熱条件を確立した。長さ1,000mmのパイプを用いて肉盛溶接実験を行い、縦曲がり変形を従来の1/10にすることが可能となった。また、タンデムTIGトーチを用いることで硬さ低減効果が得られた。

文責者
佐々木 要輔
共同執筆者
山田 順也、田中 智大、中谷 光良

当社では、焼却飛灰等に含まれる放射性セシウムの水への移行率が高いことに着目し、水洗浄によって放射性セシウムを水に移行させ、水に移行した放射性セシウムを吸着剤によって高濃縮回収する技術を開発した。放射性廃棄物となる吸着剤は長期保管安定性の観点からゼオライトのような無機鉱物が望ましいが、飛灰洗浄水のような塩類を含む水からの放射性セシウム除去には適さない。本技術の特徴は、不溶性フェロシアン化物を液中で合成し、効率的な洗浄水からの放射性セシウム回収と、ゼオライトへ高濃度に再吸着させ焼成により長期保管安定性の向上と放射性廃棄物量を低減した点である。

文責者
市川 誠吾
共同執筆者
西崎 吉彦、高野 剛彦、熊谷 直和

当社は高速海底浸透取水システム(HiSIS)を適用したRO膜式海水淡水化実証試験機をアラブ首長国連邦アブダビ首長国内に建設し、約1年9ヶ月間の実証試験を実施した。その結果、実証試験期間中、HiSISは無薬注かつ無停止で安定した運転を継続でき、取水設備として問題が無いことを確認した。また、UF膜と組み合わせることで、SDI15値が1.5以下の清澄海水をRO膜に供給し続けることができた。HiSIS取水海水を分析した結果、HiSISにより原海水中のTOC、DOC、ATP、TEP、Biopolymerといったバイオファウリングと関係のある指標を低減でき、RO膜のバイオファウリング対策として有効であることを確認した。

文責者
乾 真規
共同執筆者
新里 英幸、井上 隆之、岡本 豊、藤田 哲朗、吉良 典子、西村 浩人、中林 克

当社では橋梁事業に対するCIMへの取り組みとして、製作支援に活用している橋梁3次元プロダクトモデルシステム(Symphony)をベースに、レーザースキャナを用いた現場形状のモデリング技術を融合させてコンピュータ内に3次元仮想空間を構築し、仮想空間上で施工計画が可能となるシステムを開発した。
3次元仮想空間上で橋梁本体や架設機材(ベントやクレーン等)を実構造どおりに構築することで、時間軸まで考慮した施工計画が容易に行えるとともに、施工中の部材間の動的な干渉や、構築した架設機材の反力や数量の自動算出が可能となる。この結果、従来の施工計画を効率化するとともに、施工時のトラブル防止、安全性向上が期待できる。

文責者
岡村 敬
共同執筆者
松下 裕明

新阿蘇口大橋は当社が施工した熊本県南阿蘇村に架かる橋梁である。構造形式はバスケットハンドル型のニールセンローゼ桁橋であり、架設工法はケーブルクレーン斜吊工法である。バスケットハンドル型のニールセンローゼ桁橋はアーチ系構造特有の製作上の課題があることに加え、斜材にケーブルを使用しているために形状管理には注意を要する構造であった。また、渓谷への架設という厳しい架設条件であったため、限られた施工ヤードの中での仮設備の工夫と、安全面に配慮した架設が必要とされた。本稿は新阿蘇口大橋の架設工事の概要について報告するものである。

文責者
辻 丈彰
共同執筆者
川島 芳浩

境水道大橋は1972年に建造された連続トラス橋である。建設後40年が経過し、老朽化が進むことや設計基準の更新に対応するために耐震補強工事を実施した。耐震補強工事は、既存の部材において不足する断面の増厚、座屈拘束ブレースや粘性ダンパーといった制震デバイスの設置、支点条件の変更等の工種を含むものであったが、長大橋への施工という点において、その規模や実施工程の長さから、特に施工計画や施工手順に多くの工夫を行い、工期内に無事完工することが出来た。本稿はこのような耐震補強工事の概要について報告するものである。

文責者
辻 丈彰
共同執筆者
山下 直樹

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