Hitz技報第73巻第2号

フラップゲート式可動防波堤は、通常時は海底に倒伏し、浮力を利用して水面まで浮上して連続した壁面を形成する沿岸施設である。従来の水理模型実験や設計検討により、津波・高潮防波堤あるいは波除堤としての、本施設の有用性が確認されている。本研究では、実海域試験を通して、双方の施設への適用を想定したフラップゲート式可動防波堤の基本動作性、および、状態監視手法や維持管理手法の有用性について検証を行った。研究の結果、特性が大きく異なる双方の施設において、それぞれの試験装置に採用された運用方法、荷重の支持方法ならびに保守管理手法が、各施設に求められる基本性能を適切に満たすものであることが確認でき、実機の設計、製作ならびに現地施工を行う上でも有用なデータを取得することができた。

文責者
木村 雄一郎
共同執筆者
仲保 京一、森井 俊明、油谷 比土次
東洋建設株式会社 近本 武、五洋建設株式会社 佐々木 広輝

当社は津波や高潮等による浸水被害を防災・減災するのに効果的な設備として、陸上設置型フラップゲート(neo RiSe)を開発した。それは海岸線防潮堤の開口などに設置され、津波や高潮等により浸水が発生した際、水位の上昇に追従して無動力かつ人為操作なしに開口部を閉鎖する。本設備は適用箇所が多岐にわたり、作用する浸水の形態も多様で、設備設計に際し、各条件下における設備の水理特性を把握する必要があった。本稿においては、陸上設置型フラップゲートの構造および特長について紹介し、各種水理模型実験の結果を示したうえで、本設備の水理特性についてまとめる。

文責者
山川 善人
共同執筆者
仲保 京一、木村 雄一郎、乾 真規、森井 俊明、吉識 竜太、板垣 暢

我が国では、今後急増が予測される老朽化した水門設備の延命化や更新・大規模改修の平準化が喫緊の課題となっている。当社ではこれらの課題を簡易かつ安価に解決する手段として、平成18年より水門運転状態管理・診断システムの開発に着手した。システムの開発は平成21年度に完了し、その後、本システムの性能確認を行うため、水資源機構長良川河口堰管理所と共同で右岸下流閘門扉に本システムを適用し、平成22年から平成24年までの間、実フィールドにおける実証試験を実施している。本稿では、水門運転状態管理・診断システムの開発概要ならびにその特長を解説するとともに、実フィールドにおけるシステム運用結果について紹介する。

文責者
吉識 竜太
共同執筆者
仲保 京一、森井 俊明、青山 弘

衛星測位によって地殻変動や局地的な地盤変位の精密連続観測を行うためのシステム「NewGARD」の、複数の衛星測位システムを組み合わせて使用するマルチGNSS(Global Navigation Satellite Systems)対応版を新たに開発し、その性能評価を行なった。対応可能としたGNSSはGPSの他にGLONASSおよびQZSS(Quasi-Zenith Satellites System,準天頂衛星)である。マルチGNSSによる測位の最大の利点は可視衛星数の増加による測位可能な時間や場所(アベイラビリティ)の向上であり、本開発の性能評価でも仰角30°以上に視界を制限した状態において3D-RMSで約1cmの精度が確認できた。一方で、マルチGNSSの利用によって取り扱う観測データのサイズがほぼ倍増となるほか、GNSSの種別ごとに衛星軌道暦の精度が異なるなどシステム運用時に留意すべき点もあり、それらを定量的に評価した。

文責者
小畑 弘毅
共同執筆者
柿本 英司、松浦 友紀、久野 晃太郎

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