Hitz技報第72巻第2号

当社は1960年代初頭より環境事業に取り組み、時代の要請に応じて地域冷暖房、廃棄物焼却・発電、粗大ごみ処理、廃水処理、および排ガス処理などに係る多くの製品を生み出してきた。廃水や排ガス処理などグループ会社に移管された製品を含め、多くの技術や製品が現在のHitzグループの環境事業に受け継がれている。

本稿では現在の環境事業の中心である都市ごみ焼却施設、産業廃棄物焼却施設、粗大ごみ処理・リサイクル施設、アフターサービス事業、長期運営事業について現在までのあゆみ、現況と将来展望について述べるとともに、新事業分野であるバイオマス利活用システムや土壌浄化・環境修復事業に係る取り組み状況について紹介する。

文責者
三野 禎男
共同執筆者
増水 豊、竹田 昌弘、近藤 守、小林 利治、山崎 裕義

本稿はディー ゼルエンジンおよびプレス機械の歩みと展望について述べたものである。

2章では、ディーゼルエンジンについて述べる。エンジンは旧大阪鉄工所時代から今日に至るまで60年以上日立造船発展に大きな役割を果たしてきた。1936年に舶用ディーゼルの生産開始に踏み切り、当社独自設計の「大鉄型ディーゼル」の開発、「桜島工場」でのエンジン製造体制の確立、そして終戦と共にB&W社およびSulzer社ライセンス取得し製造メニューの拡大、大出力化を進めてきた。

3章では、当社におけるプレス関連事業の歴史と、1999年に日立造船(株)プレス部門と福井機械(株)を統合し誕生した(株)エイチアンドエフにおける事業発展の歴史及び、現在取り組んでいる次期の革新的なプレスシステムについて紹介する。

文責者

田中 春夫

(株)エイチアンドエフ
中村 一行

インフラセグメントにおいては、社会的経済基盤整備に資する製品群を100余年を超えて生み出し続けてきた。これらの製品群は、それぞれの工場の長い歴史とともに、分社化等の組織的改編を経ながらも技術的な進化を伴って生産活動が継続され続け、2009年4月にHitzものづくりの拠点として機械・インフラ本部に統合され現在に至っている。

本稿では、代表的な製品である橋梁、水門、シールド掘進機ならびに海洋防災機器について、これまでの歩みと将来展望について述べる。

文責者
桑原 浩二、伊墻 昭一郎、花岡 泰治、松下 泰弘
共同執筆者
柴田 弘、田窪 宏朗、佐藤 譲治、西村 史睦、仲保 京一

離島地域における新産業の創出を目的として、未利用海藻であるノコギリモクを対象とした飼料化事業の可能性を調査した。調査は島根県隠岐の島町で実施し、海藻採取に要する時間、乾燥・粉砕に必要なエネルギーの原単位および未利用海藻の飼料としての効果、原料供給の安定性等の検証を行った。コア技術となる衝撃式粉砕乾燥法は長期保存可能な海藻粉末を従来の半分のエネルギーで製造でき、家畜への給餌効果では、ばらつきはあるものの豚の免疫力向上と鶏の卵黄濃化が確認された。また採取した場所の海藻再生も確認できたことから、未利用資源の有効活用と離島地域における新産業創出の可能性が見出された。

文責者
上田 浩三
共同執筆者

中田 真一、竹田 昌弘

スチールプランテック(株)
三木 正夫

東北大学教授
鈴木 啓一

当社は、ごみ焼却用ボイラ水管の腐食・減肉防止対策として、ボイラ水管肉盛溶接技術の開発を進めてきた。近年のごみ焼却ボイラは高温・高圧化の傾向にあり、過酷な腐食環境にあるため、長寿命化およびメンテナンス期間の短縮を目的として肉盛溶接施工法に取り組んだ。

燃焼室伝熱管および接触伝熱管群を対象として、低希釈の溶接方法を採用し直接オーステナイト系ステンレス鋼を溶接可能な肉盛溶接装置を開発した。さらに必要な範囲だけを施工することで、工期の短縮を図っている。

本技術開発の結果、従来のNi 基合金と遜色がない耐食性を有するボイラ水管肉盛溶接が可能となった。本稿はボイラ水管肉盛溶接技術の開発成果について報告する。

文責者
基 吉夫
共同執筆者
遠山 一廣、中谷 光良

当社は、石油精製プラント向け脱硫リアクターなどに用いられるCr-Mo-V 鋼製プロセス機器の製造実績を多く有している。Cr-Mo-V 鋼溶接部は、溶接部に含まれる水素を起因とした低温割れを防止するために、溶接完了後に350℃× 4時間に加熱保持する脱水素熱処理を施工している。ここで、外気温や加熱設備の状況により対象溶接部を350℃の温度に保持するのが困難な場合を想定し、保持時間を長くすることにより管理が容易な低温にしても同等の効果が得られる条件で代替できると考えた。実験及び数値解析により、Cr-Mo-V 鋼溶接部の水素濃度分布及び脱水素熱処理による水素濃度低減効果を確認した。その結果、例えば280℃の低温脱水素熱処理でも長時間加熱保持することにより、既存の条件と同等の脱水素効果を得られることを確認した。

文責者
安部 正光
共同執筆者

中谷 光良

(株)ニチゾウテック
生田目 尚美

地盤・大型構造物連続観測システムは、高精度GPS測位技術により橋梁などの大型構造物の変位監視や地盤沈下や地すべりを24時間連続で監視するシステムである。

本システムは、監視対象に設置してGPS衛星からの電波を受信するGPS観測局、GPS観測局の受信したデータを収集し解析する解析システム、解析結果の表示や警報通知を行うモニタリングシステムから構成されており、独自のリアルタイム解析技術とフィルタリング手法により、高精度かつ短時間での変位検知を目指している。

文責者
山田 浩章
共同執筆者
林 稔、柿本 英司、熊 敏、齊田 優一、小畑 弘毅、和田 晃、杉本 淳、三宅 寿英、山崎 琢哉、高松 繁男

海洋観測技術の1つとして、GPS波浪計が実用化されている。これは高精度な衛星測位技術とブイを組み合わせて波浪や潮位などの海面変動を計測するシステムである。国土交通省港湾局は、2006年からGPS波浪計の全国配備を進めており、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震にともなって発生した津波の計測にも成功した。当社では、より経済的で多様なニーズにも応えるため、沿岸浅海域の複数地点にブイを設置するネットワーク型津波防災システムを前提とし、安価で維持管理がしやすい小型GPSブイを開発した。また、既存の浮魚礁や灯浮標などへの装着も可能な波浪観測ユニットを開発した。この波浪観測ユニットには、周期が短い風波の観測に特化した独自のGPS測位技術であるPVD法が実装されている。

文責者
三宅 寿英
共同執筆者
奥村 知樹、松下 泰弘

鋼橋において今日まで合理化の進展があまり見られない支間長100~150m程度の中規模橋梁に対して、従来橋に勝る経済性を有し、安全性および耐久性に優れた新形式橋梁であるコンボガーダー橋を開発した。本橋は、既存の合理化橋梁でありコスト縮減に実績のある2主I桁橋と細幅箱桁橋とを組み合わせて、さらなる経済性を追求した橋梁形式である。本橋の開発では、特にI桁と箱桁との接続部について新しい断面遷移構造を考案し、解析的手法を用いてその安全性と耐久性を検証した。また、本橋の架設時に対する安全性についても、想定される架設条件に対して解析的手法により確認を行った。さらに、既存の合理化鋼橋のみならずPC橋に対しても本橋の経済的メリットについて明らかにした。

本論文では、コンボガーダー橋の構造概要や特徴について述べるとともに、本橋の開発の概要および経済的効果について報告する。

文責者
比留間 堅
共同執筆者
美島 雄士、若林 保美

都市部における多くの主要交差点では慢性的に交通渋滞が発生しており、経済損失や環境への影響が問題となっている。渋滞解消を目的に立体交差橋を建設する場合、工事中のさらなる渋滞の発生を抑制するため、現地工期の短縮や交通規制を最小限とすることが重要となる。UFO工法はこのような社会的要請に応えるべく当社が1989年に考案した工法であり、現在までに3橋の実績を有している。UFO工法の最大の特徴は、従来、現地施工に多くの時間を費やしていた基礎構造に対して軽量でプレファブ化した鋼製の直接基礎を採用することによって現地工期を大幅に短縮した点である。鋼製直接基礎には2つの形式があり、現地の条件に応じて選定することにより現地施工期間を従来工法に比べて50%以上短縮できることが実施工において実証された。

文責者
美島 雄士
共同執筆者
若林 保美

既設橋の耐震補強法として、大地震時での部材の損傷を許容した上で、その損傷箇所にダンパーなど交換可能な制震デバイスを設置することにより橋梁全体の損傷を制御する制震設計法の適用が増加している。この設計法は、従来の耐力・じん性を向上させる耐震設計法に比べ補強範囲の低減などが期待でき、特に長大橋においては架設機材の小型化やそれに伴う施工空間の確保が可能になるなど、施工面での利点も大きい。しかし、適用にあたっては既設橋の地震応答特性を精度良く把握し、その特性に応じた制震デバイスの設定を行う必要がある。本稿では、橋軸方向の耐震補強に履歴減衰型ダンパーを用いた長大ニールセンアーチ橋の耐震補強工事における設計および施工概要を述べる。

文責者
松下 裕明
共同執筆者
村木 宏

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