第二世代型舶用SCRシステム(Hitz HP-SCR Mk-Ⅱ)を開発 ~従来比約4割のコンパクト化を実現、船舶の機関室配置計画を容易に~

2019年05月16日

日立造船株式会社は、このほど、船舶航行時に舶用ディーゼルエンジンから排出されるNOx(窒素酸化物)排出量を削減させる舶用SCR(Selective Catalytic Reduction:選択的触媒還元法)システムの第二世代型となる「Hitz High Pressure SCR Mk-Ⅱ(Hitz HP-SCR Mk-Ⅱ、以下、Mk-Ⅱ)」を開発しました。

SCRは、NOxを含む排気ガスに尿素水を噴霧し、脱硝触媒を通過させることでNOxを窒素と水に分解する技術であり、従来の舶用SCRシステムは、尿素水を噴霧・蒸発させる蒸発器と、尿素水を噴霧された排気ガスを脱硝触媒に反応させる反応器の2つを主要構成機器としています。

今回開発したMk-Ⅱは、尿素水の噴霧・蒸発などのプロセスをエンジンの排気管内で行うため蒸発器が不要となり、設置面積として約4割のコンパクト化を実現しています。そのため、造船メーカーでの機関室配置計画が容易となり、様々な船型に適用することができます。本技術開発では、2018年1月から本年2月まで当社有明工場の多気筒テストエンジン(4S50ME-T)で実証試験を行っており、反応器を排気管に直結させる厳しい条件でもNOx削減性能を確保できることや、排気管内で尿素水を噴霧する最適な位置・形状などを確認しております。

 当社は、世界で圧倒的なシェアを誇る舶用エンジンのライセンサー・MAN Energy Solutions SE(ドイツ)から、舶用エンジンに適用する舶用SCRシステムのFTA(First Time Approval)を2014年に世界で初めて取得し、これまで合計37台を受注しておりますが、舶用エンジンに舶用SCRシステムが加わるため、従来どおりの船舶機関室設計では空間的に設置が難しいなど、小型化(省スペース化)が課題となっていました。Mk-Ⅱの開発は、船主や造船メーカーの要望に応えるものであり、当社が併せ持つ舶用エンジンと脱硝システム・触媒の両技術が活かされた成果です。

現在、IMO(International Maritime Organization:国際海事機関)によるNOx3次規制は、北米などのECA(Emission Control Area:指定海域)のみで実施されていますが、2017年の第71回IMO海洋環境保護委員会において、2021年1月1日から北海およびバルト海を新たにECAに追加することが採択されており、順次、規制海域の拡大が見込まれています。

当社は、舶用SCRシステムの開発・拡販を通じ、SDGsで掲げられる気候変動対策などに積極的に貢献していきます。