Hitz技報第74巻第2号

当社では、環境に優しいバイオプラスチックとしてバイオディーゼル燃料製造工程の副産物であるグリセリンを原料としたポリ乳酸の製品化に向けた開発を進めている。バイオディーゼル燃料製造工程から発生したグリセリンは、当社の水熱処理技術によりラセミ乳酸に転換することができる。また、そのラセミ乳酸から得たラクチドを用いてサレン型アルミニウム錯体を触媒とする立体選択的重合技術により結晶性のポリ乳酸を合成することに成功している。これら一連の技術は当開発グループ独自のものであり、得られるポリ乳酸はiPLA®と命名している。iPLA®の特徴は、グリセリンを原料とする点、融点が汎用のポリ乳酸よりも30~40℃高い点である。本稿では、iPLA®の開発概要と実際のバイオディーゼル燃料製造工程の廃グリセリンからiPLA®を世界で初めて製造した実証試験結果に関して報告する。

文責者
岸田 央範
共同執筆者
長谷川 剛史、西川 準
名古屋大学大学院 野村 信嘉

当社では、電極材料をはじめ各種用途に適用できるカーボンナノチューブ(CNT)を低コストで生産可能にする製造技術を開発した。本技術には、ロール to ロール方式にてステンレス基材上に効率よく大量に、かつ低コストで配向CNTを製造することができる特長がある。380mm幅のステンレス基材を使用する本開発機における処理能力は0.1m2/hrであり、製造できる配向CNTの長さは5~1,000μm(外径10~30nm)となっている。

文責者
山下 智也
共同執筆者
杉本 巖生、水田 健司、井上 鉄也

当社では種々のゼオライト膜エレメントおよびそれを用いたシステムの開発を進めているが、本報では、既報にてバイオエタノール脱水への適用を例に紹介したA型ゼオライト膜での開発をベースに、別種のゼオライトを用いてCO2を選択的に透過させる膜エレメントを開発した内容を中心に紹介する。ゼオライト膜にとって有効なCO2分離への適用先は、ガス田から噴出する天然ガスに随伴されるCO2の除去やIGCCにおける石炭ガス化後のCO2分離など、被分離媒体が高圧状態で存在する場合に適しており、そのような場合では他の分離技術と比較して大きな省エネ性を実現することができる。

文責者
藤田 優
共同執筆者
高木 義信、矢野 和宏、澤村 健一、浅利 祥広、篠矢 健太郎

養豚集中地域における環境問題の解決を目的として、余剰堆肥の有効利用システムを開発した。燃料を用いず、「エネルギー自立型間接加熱法」により堆肥を炭化させ、堆肥に含まれているリンを植物の生育に有効な可溶態で回収し、粒子表面のリン集積現象を利用して集積部を効率よく分離することでリン含有量を向上させる一連のプロセスを確立した。また回収した炭化物をリン鉱石に混合し、化学肥料である過リン酸石灰を製造したところ、全ての品質基準を満足した。さらに有機肥料や環境保全資材としての利用可能性を検証したところ、化学肥料と同等の肥効が確認された。

文責者
上田 浩三
共同執筆者
阪本 亮一、蒲谷 淳、徳尾 真信

蒸発法海水淡水化装置の一つである多重効用造水装置(MED)は、多段フラッシュ法(MSF)と比べ、熱効率が高く、消費電力が低い、メンテナンスが容易などの特徴を持っている。また運転温度が70℃以下と低いことから幅広いグレードの材料の適用が可能である。
当社では、この運転操作が容易で高い熱効率を兼ね備えている水平伝熱管式MEDの開発を完了し、開発で得た伝熱特性をもとに関西電力株式会社高浜発電所に第一号機を建設した。本設備は、蒸気式圧縮機(サーモコンプレッサー)を採用し、造水比10以上の高い熱効率を達成し、また導電率10μS/cm以下の高純度の生産水水質を満足している。本報では、プロセスの概要と運転結果、さらに新技術の開発について報告する。

文責者
来住 宜剛
共同執筆者
上更谷 幸治、津路 真邦、大塚 裕之、大島 翼、井上 隆之

本論では、従来の逆浸透(RO)法海水淡水化プラントの様々な問題を解決する新しい前処理技術を提案する。このRO膜の前処理のプロセスは、海水取水のための高速海底浸透取水システム「HiSIS」と限外ろ過(UF)膜から構成される。我々は、HiSISの最適な浸透速度を見出すために海水ろ過実験を行って、HiSISとUFの前処理システムによって処理される海水の水質等を評価した。実験結果として、HiSISは安定に稼働し、100m/日の高速な浸透速度でさえ高い性能を有することを確認した。我々は、HiSISとUFプロセスの組合せがRO法海水淡水化プラントの前処理法として効果的であると結論付けた。

文責者
新里 英幸
共同執筆者
乾 真規、吉良 典子、井上 隆之、岡本 豊

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